【Amazonで購入】奥村美里『英語は5歳児の日本語で考えると面白いように話せる! 』(2013)きこ書房
5歳児に話す
「嵐を呼ぶ5歳児」こと野原しんのすけ (クレヨンしんちゃん)ちゃんぐらいの子供に話すと想像すると混乱しそうになりますが、奥村先生の言わんとすることは、大人が大人に話すような語彙で話そうとするから英単語もなかなか出てこないし、難しい言い回しも出てこないと言って焦るのだと。話したい内容を
[大人言葉の日本語]→[5歳児に話すように直した日本語]→(英訳)→[やさいい単語と表現の英語]
としてしまえば良いというのがこの本の趣旨なのですが、5歳という年齢設定には人によって言いたいことがあるかもしれません。ただ、3歳児では幼すぎますし、あまり大きい子供を想定すると語彙力も増えてて彼らの日本語の語彙に匹敵する英語の語彙力が自分にあるのかと自問自答することになります。そういうバランスも考えてのことだと思いますが、奥村先生は5歳児と想定して本を書かれていますが、一度通しでこの本の内容を学んだら、後は自分の英語の実力にあわせてカスタマイズもできるのではないでしょうか?
単語だけではない
大人の話す言葉と子供の話す言葉の違いは、単に語彙力の差だけではありません。表現の中に故事成句や慣用表現、比喩などが複雑に使われています。そしてそれをそのまま英語に訳そうとするには、英語の語彙などが不足する人が多いのではないでしょうか?
「類は友を呼ぶ」を”Birds of a feather flock together.”と訳せたらカッコいいですが、”Like attracts like.”の方が単語も表現も簡単だし、このようなこなれた表現でなくても”People who are similar to each other can attract one another.”であっても、通じさえすれば良いというわけです。この本が目指す英語は、一流の上級者の英語ではないかもしれませんが、多くの日本人にとってはとっつきやすいレベルだと思いますし、手近な目標を差し置いてあまり高みばかりを目指しても達成に至るのは大変だと思います。
そして、自分が思っている一番大切なことは、『5歳児に話すように』と意識することで、話そうとする内容の中で取捨選択し、一番伝えたいことだけを残して枝葉末節を切り捨てるということが出来るようになることです。
短期間で英語を話せるようになるために
良く短期間で英会話が話せるようになるという広告をご覧になったことはありませんか?2~3日くらいの特訓で話せるようになるという内容の広告です。知らない単語を修飾したり関係代名詞使って説明しまくってなんとか通じさせるとか、言い換え(rephrase)の特訓をすれば、高校くらいまで普通に日本の学校で英語を学んできた人の英語力なら、結構2日くらいで辞書がない状況でも言いたいことを最低限伝えられるようになれるのではないかと、私は常々思っているのですが、この本は『言い換え』の部分に対して『5歳児に話すように』という工夫をして、自然と優しくてわかり易い表現を探す工夫をするように誘導してくれているのが素晴らしい点だと思います。わたしたちの潜在意識が『5歳児』という言葉に引きづられるのがきっと良い効果を生んでくれます。
具体例が豊富
本の中身は、大量の具体例です。一つ一つ実例を学んで、自分が実際にこの手法を使うときにどうすれば良いのかを身に付けます。極論すると、今あなたが持っている英語力はそのままであっても、あなたが話したい内容を日本語からやさしい日本語に一度前処理する技術だけで、今以上に活用できるようにするという手法です。
コミュニケーションが目的なら
この本を勉強したからといって、英文読解力が上がったり語彙が急増するようなこともないと思います。リスニングに関してもこの本を読んだだけでは向上しないでしょう。しかし、自分の持っている英語力だけで頑張って英語を話すということにかけては、強力なツールに出来る本だと思います。そして実際に英会話の機会が増えれば、間接的になりますが、リスニングの能力向上に貢献するのではないかと思っています。まあ、英会話する相手があっての話ですが。
そういう意味で、英語でのコミュニケーション能力の向上を図りたい人にはお勧めできる本です。このような『言い換え』の手法と『語句を修飾して知ってる語彙でまかなう』の2つの技術に特化したセミナーとかあれば、日本でももっと気楽に英会話できる人が増えるのにと、そういうことを考えさせられる本でした。(5歳児英会話のセミナーは過去にあったようです)