マヌカハニーの定義とは?モノフローラルとマルチフローラル
ニュージーランドの第一次産業省が科学的な定義方法を研究し、規格を定めています。化学的な成分検査とDNA検査を行い、基準値を満たすことが必要です。マヌカに由来する特有の成分とマヌカ由来のDNAを確認します。
https://www.mpi.govt.nz/growing-and-harvesting/honey-and-bees/manuka-honey/
のページの以下のリンク
View our mānuka honey definition infographic [PDF, 3.6 MB]
に詳細が書かれていますが、下表にまとめます。(http://www.mac.or.jp/mail/190601/02.shtml を参考にさせて頂きました)
個々の内容にはご興味ない方が多いと思いますが、このようにニュージーランド政府が研究をしてこれだけの検査項目を規定し、検査させているということをご理解頂ければ、品質に安心して頂けると思います。
ニュージーランド第一次産業省によるマヌカハニーの定義
化合物 | モノフローラル | マルチフローラル | |
#1 | 3-phenyllactic acid | ≥ 400 mg/kg | ≥ 20, < 400 mg/kg |
#2 | 2′-methoxyacetophenone | ≥ 5 mg/kg | ≥ 1 mg/kg |
#3 | 2-methoxybenzoic acid | ≥ 1 mg/kg | ≥ 1 mg/kg |
#4 | 4-hydroxyphenyllactic acid | ≥ 1 mg/kg | ≥ 1 mg/kg |
#5 | DNA from pollen (Leptospermum scoparium) | < Cq 36 (約3 fg/µl) | < Cq 36 (約3 fg/µl) |
#1~#4 が化学的な成分検査項目
#5 はDNA検査の項目(リアルタイムPCR検査による。Cqとは増殖曲線と閾値が交差する点)
蜜源となる植物が単一、つまりマヌカの花の蜜のみからできたハチミツとみなせる厳しい基準がモノフローラルのものです。KOTAHIマヌカハニーはこちらになります。他の花の蜜も混じっているが、マヌカ由来の蜜が充分に多くマヌカハニーとして扱えるのがマルチフローラルです。
通常はモノフローラルのマヌカハニーを作れる環境なら充分に人里を離れ、畑や牧草地などの農薬を使っている環境からも充分に離れています。私の調査した範囲内ではモノフローラルのマヌカハニーで農薬成分などの問題が起きていないのは、元々モノフローラルマヌカハニーを作るにはそれほど良い環境で採れた花蜜だけで作らないといけないからだと推測されます。
近年はマルチフローラルのマヌカハニーから基準値以上の農薬成分(除草剤で使用されるギリホサート)が検出される事例が増えてきていますが、そういう危険を避けるためにも高級、高価にはなりますが、モノフローラルのマヌカハニーを選択するという自衛手段はあると思います。
また、これらの検査はニュージーランド政府の資本が入っている研究所で行われ、検査手法や精度に関しても安心できます。また表中の#5にあるDNA検査ですが、新型コロナ肺炎で有名になったPCR検査の手法でマヌカ由来のDNAを検査しています。このように、ニュージーランド政府は自国の大切な産業であるマヌカハニーに対して厳格な規格を設けて管理しています。そのような事情もあり、ニュージーランド国内でマヌカハニーが小売される最終製品として瓶詰めされて封がされて輸出されているものは、最低でもニュージーランド政府の基準に従っていますが、ニュージーランド以外で瓶詰めされたり加工された製品にはニュージーランド政府の管理を離れているので、それぞれの業者が信頼できるかどうかを注意する必要があります。
UMFとMGO
UMFとMGOはマヌカハニーの等級(グレード)を示すのによく使われる数値で、皆さんもご覧になったことがあると思います。かつてはマヌカハニーの抗菌作用を示すのに各社がいろいろな数字を使っていて単位が乱立していました。今でもその名残があり、なんの単位がよくわからないものもありますが、現在のところある程度の信用ができる単位やグレーディングシステムは、この2種類です。
UMF
Unique Manuka Factor.の頭文字を取っています。 ニュージーランドの業界団体であるUMFHA(Unique Manuka Factor Honey Association, UMFはちみつ協会)が認証しているレイティングシステムです。UMF認証を受けるためには、この協会に加盟する必要があります。マヌカハニーのUMF認証を受けてUMFのマークを表示するためにはハチミツの生産だけではなく、ビン詰と封(シール)などの全ての工程をニュージーランドでUMFの認定業者によって行われないといけません。マヌカハニーそのものではなく、マヌカハニーを使って加工された製品などに関してはニュージーランド国外の会社でも認証を受けられるようになってきているようです。
MGO
”MGO™”はマヌカヘルス社の登録商標です。マヌカハニーの抗菌成分とされるメチルグリオキサールの濃度(mg/kg)をMGO™という表記で表しています。ニュージーランドで登録商標となっているので、用心してMGOの使用を避けてMGなどと表記して同様の内容を表示する会社もあります。一般的にはそれぞれの会社が独自に表示しています。
UMF vs. MGO
Gibbs Honey Company Limited(UMFはちみつ協会加盟 Licence # 2922)のKOTAHIマヌカハニーはUMFの認証を受けてUMFマークとUMFのグレードを表示しています。現実問題として、UMFはちみつ協会に加入して認証を受けてとなると、少なくはない費用もかかりますので、生産者の中には既存の団体に対して既得権益を受けていると嫌っている者もあり、単位、規格の統一は難しそうです。UMFは歴史的には消毒液のフェノール溶液の濃度との比較で数値を決めていましたが、現在ではメチルグリオキサールの濃度を検査してグレードを決めているので、どちらが科学的かという観点でも特に差はないと思って大丈夫です。
初期のテスト
巣箱のハチミツを抽出してドラム缶に保管したら、まず初期の段階の成分検査を行います。これは熟成前の検査結果から、適切な熟成期間や熟成によって到達するメチルグリオキサールの濃度、すなわち製品のグレードを予測するためです。
熟成期間が必要
テストレポートに基づいて、適切な熟成期間がわかりますので、それに応じてマヌカハニーは熟成のために倉庫等に何ヶ月も保管されます。
製品としてのテスト
熟成期間を置いた後には成分が変化してグレードが上がることもありますし、瓶詰め前に品質の平均化のために複数のドラム缶に保管されていたマヌカハニーを混ぜることもあります。そのため、製品に表示するグレードを確認するためには、製品化する直前のサンプルを分析する必要があります。また、国際規格でハチミツのHMFの上限値なども定められているため、HMFの濃度なども合わせて検査されます。UMFはちみつ協会ではHMFも協会の方で確認して認証しています。
かなり説明を省きながら書いたのですが、思ったより長くなりました。お読み頂きありがとうございます。